さらば

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 さよならだけが人生なのかと、桜の木に問いかける。桜の木は何も答えない。口も何もないからだ。あるのは爛々と咲いたピンクの花びら。春の薫風があたり一面を撫でる。小高い丘にある一本の桜は音を立てながら揺れ、花びらを散らす。

 「さよならだけが人生なのか。さよならなんて寂しいね」

 クイと一口、酒を喉に通らせる。お前もどうだと酒を桜にかける。酒の香りがほのかに春風に乗り、町へ別れを告げるのか。

 「さよならだけが人生だったら、何が残る」

 太陽が冬の空気をちょうどいいぐらいに温めている。もう一口酒を口に運び、丘から野原を見下ろす。背丈の低い草はゆれ、土色と緑色が交互に入り乱れる。

 「さよならだけか」

 これから見果てぬ夢を見に町へ住む。それは気分のいい夢かそれとも悪夢となるか。春の陽気が酒気帯びた体に眠りへ誘う。春の風は桜をゆらし、花びらは次への道へ送り出す。さよならだけか...
ファンタジー
公開:18/03/17 22:06
更新:18/03/17 22:07

ヒルタ

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