雪柳

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満開の雪柳を揺すると白い花びらが舞い落ちて、地面に落ちるとスゥッと溶けてなくなる。
それは吹き出す春の息吹を避けてこっそり隠れた冬の名残だ。
枝を揺すった時にだけ現れる雪景色。
「こら!花がダメになるでしょう」
母は私を叱ったが、ヒラヒラと落ちては消える花びらの雪を、私は飽く事なく眺めていた。
案の定、降る花の冷たい空気にあてられて、私は風邪をひいてしまった。
「だから言ったでしょ!」
熱でぼうっとしていても母の小言は容赦ない。
「大人しく寝ていなさいよ」
そう言って母が額においたのは雪柳の花の枝。
ひんやりとした感覚が心地良く、私はゆるりと眠りについた。
ファンタジー
公開:18/03/17 21:09

堀真潮

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