結晶化ミイラ

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白い布切れをそっと巻き直す
時間を戻すように左回りに…

トマト色の太陽が沈む黄昏刻に、影の世界は目を覚ます。
冷たい水の底は温いと感じるまで、皮膚の硬化を繰り返す。
鱗は少しずつ増えてゆく……(蟲みたい)
皮膚はもう恐竜のようにガサガサで、醜いから明るい時は姿を隠す。

レモン色の月が頭上で輝く夜は布切れを長く垂らして風に身を委ね、言葉を憶えていくようで本当は忘れてゆくのだ。
人間の姿に似ていながら誰も来ない森の奥で、少しずつ人間の血を薄れさせてゆく。
(人間)と符合する部分があといくつ残っているだろうか?

朝が来る前に湖の底まで沈んでゆく。
透明度の高い其処は静かで、小さな音が生まれ続けている。
それは光になる。星になる。
少しずつ硬く透けてゆく肉体を見下ろして、僕は水晶化する植物に成るのだ。

白旗の様に、ひらひらと包帯が巻きついている。

(時間はもう要らない。)
その他
公開:18/03/18 22:12

黒崎水華

BIRTHDAY:  1987.5.21
憑幻家、鏡花水月を着地点に創作して居る。

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