夏の物

そろそろ夏の準備をしようと、俺は行きつけの店に来ていた。
「オヤジ、夏物を一つ」
夏物とはクーラー代わりに部屋の温度を下げる幽霊を指す。
「夏物ね、それならこの嬢ちゃんはどうだい。正統派の夏物幽霊さ」
「こっちの気分も沈みそうになる顔だな」
「じゃあこの嬢ちゃん、いつでも命を狙ってて毎日背筋ひやひやだぜ」
「金を出して危ない目にあいたい奴はいないだろ」
「じゃあこの嬢ちゃんはどうだ、顔に似合わぬ親父ギャグを連発する。寒いぜ？」
「そんな冷気はごめんだ……」

結局、扇風機の代わりになる送風型の幽霊にした。この娘にした理由は、この絶妙な強度で部屋に対流を生む送風能力ともう一つ。
「あぁっ、今おしかった」
自身の風でスカートがめくれることに期待して。

ちなみに最近では、幽霊といえど女性なのでセクハラは許さないとする人が増えている。
幽霊は便利だからと、その売買、物扱いはこれからも続くけど。