流星キット

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流星を見ようと誘われて、おれは彼女の家に遊びに行った。家庭用のプラネタリウムでも買ったのかなと思っていると、彼女は袋を取り出した。
「流星キットっていうもので」
袋の中には無数の灰色の粒が入っていて、彼女はそれを掬って皿に移した。レンジでチンして戻ってくると、粒は眩く光っていた。
電気が消され、部屋は闇に包まれる。
彼女は粒をつまみあげ、それを宙に放り投げた。
次の瞬間、おれは目を見開いた。粒たちが光の尾を引き、四方に飛び散ったのだ。彼女は次々に粒をつまんで宙に放る。大量の光の筋が闇を切り裂いていく――。
やがて皿が空になると、彼女が言った。
「ちょっと掃除機かけちゃうね」
気がつくと、床中に光の粒が散らばっていた。彼女は落ちたそれらを吸いはじめる。
「この遊び、掃除だけが面倒で。でも、これはこれできれいでしょ?」
サイクロン式のその中で、光は渦を巻いていた。それは銀河のようだった。
ファンタジー
公開:18/03/17 16:38
更新:18/03/18 16:32
スクー

田丸雅智( 東京 )

1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。

◆公式サイト:http://masatomotamaru.com/

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