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海岸からほど近いそのお寺は、山に抱かれるように建っていた。
苔むした階段を登りきると山門があり、※※寺と書かれた寺額が掲げられていた。振り返ると海を一望する事が出来た。
境内には草木に隠れるように朱色の格子戸が嵌った岩窟があった。
『この格子で閉ざされた途は海へと続く』という伝承があるらしい。
すぐ側には小さな塚があり『人魚塚』と書かれていた。
シーグラスや貝など見目麗しい物が供えてあり、海の寺の風習なのかと面白く思う。
私は格子の隙間から内を覗き込み潮の香りを嗅いだ。
耳を澄ますと、歌声とも啼き声ともつかぬ音と波の音。
噫。噫。噫……。
ざ。ざ。ざざーん……。
強い風が吹いた。
岩窟の奥闇から桜の花びらがひらひらと、いくつも舞い出てきた。
私は花びらを目で追いつつ、潮風に乱れた髪を手櫛ですいた。
──かさり。
手の内を見ると、花びらだと思ったのは全て桜色のウロコであった。
苔むした階段を登りきると山門があり、※※寺と書かれた寺額が掲げられていた。振り返ると海を一望する事が出来た。
境内には草木に隠れるように朱色の格子戸が嵌った岩窟があった。
『この格子で閉ざされた途は海へと続く』という伝承があるらしい。
すぐ側には小さな塚があり『人魚塚』と書かれていた。
シーグラスや貝など見目麗しい物が供えてあり、海の寺の風習なのかと面白く思う。
私は格子の隙間から内を覗き込み潮の香りを嗅いだ。
耳を澄ますと、歌声とも啼き声ともつかぬ音と波の音。
噫。噫。噫……。
ざ。ざ。ざざーん……。
強い風が吹いた。
岩窟の奥闇から桜の花びらがひらひらと、いくつも舞い出てきた。
私は花びらを目で追いつつ、潮風に乱れた髪を手櫛ですいた。
──かさり。
手の内を見ると、花びらだと思ったのは全て桜色のウロコであった。
ホラー
公開:18/03/17 03:01
【椿あやか】(旧PN:AYAKA)
◆Twitter:@ayaka_nyaa5
◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。
◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
https://note.com/nekometubaki
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