桜

花が咲く直前の桜は、木の幹から枝の先まで淡いピンクにみえるんだ、木全体がピンク色なんだよ、、とあの人は言った。

信じないあたしの手を嬉しそうにギュッと握り裏の川べりの桜並木に引っ張ってく。

ほら！！

あ、一面靄がかかったような
薄いヴェールをまとったかのような
淡いピンク色に煙る桜並木。。
まだ一輪の花も咲いてないのに
あふれ出さんばかりのピンク色を茶色の下に隠して今か今かと準備している。
木全体でピンク色に染まって開花の時を待っていた。

あれから何年もの月日が流れ、あたしは変わらず桜の咲く前の木を眺めるのが好きだ。
今に満開に花開くその時をギュッと体内に閉じ込めてウズウズしてる気がする。

今日は娘の結婚式。
リビングの四角いフレームの中で微笑むあの人の前で「パパあたし幸せになるね 」と溢れんばかりの笑顔で小さく手を振った娘は
今開花の時を迎えてピンク色に包まれて見えた。