鶯餅の恩返し

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おばあちゃんがおやつに鶯餅を作ってくれた。
白玉粉で作ったお餅で餡を包んで、それから鶯の形に作って、青きな粉を丁寧にまぶす。
「さあ、どうぞ」
お皿に乗せて、せっかくだから窓際でと思ったのがいけなかった。
鶯餅はあっという間に開け放たれた窓の外。手の届かない梅の木の上。
生まれたばかりの鶯餅は鳴くのが下手でケキョケキョと変な声を上げている。
おやつに逃げられた僕のお腹は、鳴き声に合わせてグゥグゥ鳴った。
「ちょっとお待ち」
そう言うとおばあちゃんは脚立を出して梅の木の下に持って来ると、それに上って鶯餅を捕まえた。
「餅は木にくっ付くからね」
せっかく捕まえてもらったけれど、哀れに鳴いている鶯餅が可哀想で、結局僕はくっ付かないようラップを巻いて窓から放した。

数年後。梅の木に鶯餅がやって来るようになり、もう家で作る事はなくなった。
僕は喜んだが、おばあちゃんは寂しそうだった。
ファンタジー
公開:18/03/15 21:57
更新:18/03/15 22:13

堀真潮

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