真夜中に少女に戻る老婆たち

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真夜中に目が覚める。
時計の鐘が鳴る前に金色の鍵を両手で持って時計に祈る。
ーカチ コチ カチ コチー
秒針の刻む音が響くほど夜は静かだ。
時計の鐘が鳴ると部屋は温かい羊水の中のように液体を満たす。これを()はエーテルと呼んでいた。
この空間では物事はゆっくりと動く。
私は鏡へ映る自分を眺める。
金色の髪は宙でふわりと漂い、水中にいるかのように柔らかだ。
隣りの部屋から()がやって来て私に微笑む。
これから2人でお茶会をする。
毎晩密かに嗜む甘い蜂蜜入りの紅茶と砂糖菓子。
私達はこの時間の為に生きている。
真夜中の幸福の為、私と()は朝と昼を犠牲にした。
一生涯の寿命なんて要らない。
永遠の若さと些細な幸福!
その代償にまた朝日が昇って部屋のエーテルを飲み干してゆく。
干からびた部屋に残される私も皮膚が樹木のように乾いている。
老婆なのである。
また、真夜中まで繰り返し繰り返して微睡む。
その他
公開:18/03/13 21:47

黒崎水華

BIRTHDAY:  1987.5.21
憑幻家、鏡花水月を着地点に創作して居る。

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