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水面に言(こと)の葉が浮かんでは消える。
誰かが一石を投じる度に波紋が広がり、新たな言の葉を生む。
私は、ただひたすら地面に落ちている言の葉を一つ一つ拾い上げ、机上で並び変える。
パズルを完成させる様な作業が永遠に続く。
完成したと思っていてもピースが抜けていたり、余ったり。
人々は、それなら外枠から作ればいいだろうと容易く言う。
だが、私は型にはまらない人間だ。私が苦労して紡いでいるのは物語の一部。
そもそも人の人生に完成形は無い。完成しないから他の言の葉で補おうといろんな場所を探す。あるはずがないと分かっていても。
だから、いつまで経っても完成しない。

ある日、言の葉が枯れた。泉の様に湧いていた言の葉がパッタリと浮かばなくなった。つまり、言の葉も泉も枯れたのだ。
散歩をしても、お風呂に入っても。はたまた、夢の中にも出てこなくなった。

きっと誰かが、知識の泉の元栓を抜いたのだろう。
公開:18/03/13 15:03

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