異形心中

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鬱蒼と茂る山道を歩く彼の後をついて行く。
足元の植物が急速に成長する。
私が歩いた後には枯れた植物の残骸が倒れている。
立ち止まると彼は手を引いてくれる。

(何処に行くの?)

声は声にならず掠れた音となって溢れた。彼は振り返らずに進む。
険しくなって行く道と生い茂る植物……私に触れると枯れてゆく植物。

(何処まで行くの?)

言葉にならず音は吹き荒ぶ。
いつしか雪がちらついている……違う、これは山桜だ。
彼は足を止めない。私も彼の手を離せずにいる。

鬱蒼とした山道の高い頂上、酸素が薄く呼吸が苦しい。彼は止まらない。私も止まれない。
切り立った崖の上から、2人で落ちてゆく。

雨音を耳が拾う…耳だったのだろうか?

軽やかに走って行く足音。
子どもの足音。
私と彼の間に子どもが居たならきっとそう、色づいた声で笑う。


絡まった手足を縺れさせて、私と彼はゆっくりと地面に同化してゆく。
その他
公開:18/03/14 22:24

黒崎水華

BIRTHDAY:  1987.5.21
憑幻家、鏡花水月を着地点に創作して居る。

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