工事中

左官職人が、工事現場で壁に漆喰を手際よく塗っていた。

そこへ通りかかった少年が遠くから珍しそうに見つめている。
職人の手さばきに感心したのだろう。少年は工事現場の柵の下をくぐり抜け、職人の側へやって来た。
「おじちゃんすごいね」
職人は少年の声に驚き振り向いた。
「こらっ、おじちゃんは忙しいんだよ。工事中だから、あっちへ行きなさい」
少年は小さく頷き、工事現場を後に、家路へと向かった。

少年が帰宅してすぐに来客があった。宅配業者のようだ。
母親は手が離せないようで、少年が玄関の扉を開けた。
「お届けものです。ママいるかな？」
「うん。いるけど今、工事中なんだ」
「工事中？」

そのころ、母親は顔にファンデーションを塗るのに必死だった。