春霞

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 お寺の本堂から経文を唱える声が聞こえる。僧侶は全員鼻声で護摩を焚きながら題目を絶叫し、その姿は何かを呪うような気迫だ。護摩の方へ目をやれば人型に組まれた木が火に包まれている。旅の僧侶が訳を聞くと業を終えた僧が涙ながら
 
 「呪詛を掛けているのでございます。我々は風邪に似たような呪いを鬼にかけられてしまい、それからというもの春先になるとこうもひどい有様でして」

と訴え、僧侶たちの目はますます赤くなり、鼻水をすすりながら泣いていた。

 そして、僧侶たちは堂へ戻りまた経文を唱え始めた。護摩の火はだんだんと燃えあがり、人型の木は燃え盛り、しまいには堂に飛び火、堂は全焼し、ついには山にまで広がった。運よく大雨が降り山の火は鎮火した。加持祈祷が功を奏したのかその日から僧侶たちの呪いは解かれたという。

 この灰が各地へ飛び春先になると人間に憑依しこの僧侶みたくなり、春霞と言われるらしい。
ファンタジー
公開:18/03/14 18:20

ヒルタ

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