認識

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野良猫の死んでいるのを見た。死んでから結構時間が経っているようで、その亡骸をカラスが啄んでいた。奴らは毛を食べないようだ。尻の穴から中の肉だけを貪られた猫の胴は萎んで見えた。
「あのカラス追っ払おうぜ」
友達がそんなことを言うが、僕はそれをしないように言った。
目の前の光景はこの世界の日常だからだ。巧妙に隠されているものだから、僕らは免疫を持たずに突然に死に触れ、以降はそれとの邂逅を恐れ、避けるようになるけど。
考えない方が楽なのもある。家族、友人のは勿論、日ごろ口にしている家畜なんかもそう。その生前の姿なんて、殆どの人間の頭にはないだろう。考えないことで心の平穏を保っている側面が、僕らにはある。
「朝から気分悪いわ」
そんなことを言っていた彼は、2時限後には弁当に手をつけていた。聞けば朝御飯を抜いてきたらしく、我慢の限界だったとのことだった。うまい、うまいと頻りに呟く姿が印象的だった。
その他
公開:18/03/14 04:04
更新:18/03/15 00:36

sakana

ショートショート好きです
学生やってます。

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