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旅人は暗闇に小さく仄かに光る物を発見した。チカッ、チカッと点滅を繰り返している。おや、季節外れの蛍だろうか。藪をかき分け、光る物体の方にそぉーと近付く。するとそこには尾が三股に分かれた猫達が集まっていた。
お頭、最近はさっぱり旅人が来ませんね
当然だ。お前が空腹で必死なのは分かる。しかし、そんな怖い顔で追いかけたら誰だって逃げたくなるさ。だから、お前は修行が足りないと言われるんだ。狩猟の達人ともなれば獲物の懐までスゥーと無音で近づいてサッと捕食するものだ。
旅人は麓の村でこの山奥には化け猫が住み着き、人を喰っている話を思い出した。
おい、そこに誰か居るのか
しまった、気付かれた。旅人は懸命に頭を捻って考えた。
へい、あっしは、しがない旅猫でございます。今はこの化けの皮を使い、人間に化けております。ほぉー、それはすごい。見分けがつかぬな
えぇ、これは化け猫の皮を剥いで作ったものですから…
公開:18/03/12 01:50

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