旅と猫
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もう私は自由だ。さらば監獄の城、ペットショップ。今日から私はフリーだ。背後にそびえる巨塔を目に焼き付け、過去を振り返る。さっきまで私のいた場所は鉄格子に囲まれた狭い部屋の監獄だった。私以外にも犬、鳥、魚、爬虫類といった多種族の者が高い塀に囲まれたこの場所で暮らしていた。近隣トラブルは日常茶飯事。奴らの監視は実に厳しい。ちょっと抜け出しただけで大騒ぎ。私にして見ればちょっと気分転換しただけなのに。全く奴らは少し心配しすぎだ。毎日、カリカリ、カリカリ。そんな事をされるとこっちの方もカリカリしたくなる。だから私は脱獄して旅をする事にした。こんな所にいたら私は駄目になる。幸い私には同行者がいる。ツアーコンダクターの黒猫君だ。彼とは檻の中で同じ釜の飯を食った間柄である。上手い話があるんだが付いて来るかいと誘われ、現在に至っている。足音を消し、暗い長い長いトンネルを抜けるとそこは・・・寄席だった。
公開:18/03/12 01:34
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