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ここは鄙びた旅館の一室。私は温泉で火照った体を冷ますため夜空が見える窓辺の籐椅子に腰を掛けた
ふと窓辺から外を見ると眼下に薄明りで照らされた旅人の顔が。どうやら温泉街を散策している様だ
あら、あそこの人、私と同じ浴衣だわ。あの人もきっと私と同じ宿なのね
奥の方を見ると先程バスで渡って来た白い雪の渓谷と赤い吊り橋がここからでも良く見えた
バスで渡っている最中は暗闇のせいで川底が見えず、ただただゴーゴーと流れる水の轟音だけが聞こえていた
かなり昔に施工された様でバスが進む度、ギシギシと音を鳴らし、乗客を恐怖に陥れていた
でも、今、私の隣に座っている飼い猫のミーだけは「そんな事、自分に関係ない」とでも言う様に前足で毛繕いを繰り返し、ファ~と伸びをした後ぐっすりと眠ってしまった
この子は将来、大物になるわね
窓から月光が差し込んだ。ミーの体は白から銀色に変化する
さて明日はミーとどこに行こうかしら
公開:18/03/12 01:18
更新:18/03/12 03:20

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