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私は由緒正しき猫族の王である。その証拠に私が声を掛ければ巨人が私のために供物を貢いでくれる。巨人にどんな暴挙をしても私の笑顔ひとつで許される。つまり我はすごく偉いのだ。だがそれ故に困っている。この城から一歩も出られないからだ。気持ちは分かる。家臣が王を守るのは義務だからな
王は黄昏色の天窓から見える月を眺め、家臣の行く末を考えた
はぁー、王とは実に孤独なものだ。出来る事ならこの城から出て旅でもしてみたい
本音がぽろっと零れ出る
そのお望み叶えて差し上げましょう
風に乗って声がした。見るとそこには黒猫が木の枝にチョコンと座っていた
さぁ、この枝に飛び移りなさい。大丈夫ですよ。ここにはあなたが望んでいる自由があるのです。何を躊躇しているのですか。さあ勇気をお出しなさい。あなたは王なのだろう
その声に促され王は自分の体に纏わりつく枷を口と爪で引き千切り充分に助走をつけてから高く高くジャンプをした
公開:18/03/12 00:44

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