ホンジツはセイテンなり

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 テクノロジーの進歩は工業製品に止まらず森林の木々の細胞壁にまでおよびんだ。
混入されたナノマシンが進化し木に個性が表れた。
今では音楽を聴く際使用するスピーカーさえも天気の良し悪しに左右されていた。
 
南国で採れた木材を使ったスピーカーはおおむねのんびりとした性質で、多少の天候の変化では動じないが晴天続きだとアップテンポで明るい音色を出しバラードさえもポップにアレンジしてしまう。
反対に北国で採れた材料だと堅物で音程やリズムは正確に刻まれるのだが、少しでも気象条件が変化すると再生中でも勝手に音を止めたりヒステリックに音を乱し始める。

こんな調子でスピーカーの気分次第で音楽を奏でられるので原音再生など遠い夢となってしまった世の中でプロのミュージシャンは一人も居なくなった。

今では古代の遺跡で発掘されたスピーカーが高値で取引されている。
SF
公開:18/03/11 21:06

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