マンハッタンブレックファースト

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マンハッタン14番街。毎朝出勤前に角のベーカリーでコーヒーとベーグルを手にする。カットしオーブンに入れ、たっぷりのバターを染み込ませる。絶品だ。
表面に塗されたポピーシードに秘密があると踏んでいる。噛むほどにプチプチと弾けるその食感と独特な芳香が他の店のものとは違う。
そう店のオヤジに告げると、
「そりゃ、ウチのシードは特別だからさ。なんせ俺の毛穴から採れるんだから」
…ジョークはよしてくれ
「全身の毛穴からだ」とオヤジは強調する。
…うゲェ、もう食えないじゃないか
言われてみれば酸味がかった塩気が。
「ウチの家系は代々それが引き継がれているのさ」
もう二度と来ない。
オヤジが思案顔を見せた。
「これならどうだ」
同じじゃねーか。
「こいつは俺のシードじゃねぇ」
オヤジは声を潜めてレジの美人の娘さんをチラ見した。
…そ…そういうことか…

そのシードからはほんのり甘酸っぱい香りがした。
ファンタジー
公開:18/03/12 22:14
更新:18/03/13 15:16

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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