旅と猫

今日、この街を出る事にしたよ。
どうしても行かれるの
あぁ、今度は長い旅になりそうだ。
戻ってきて下さいますよね
いや、この街にはもう戻らない。旅先で骨をうずめる覚悟だ。
一緒に来てくれとは仰って下さらないのですね
君だって分かっているはずだ。僕と君では身分が違う
それが何だと言うのですか。あなたとは幼少の頃から身分の隔てなく一緒に育てられた仲ではありませんか。なのに今頃になって身分の事を持ち出すなんて。お父様は私の事よりも家猫と言う地位の方が大事なんですわ。
これこれ、自分の父親を貶める事を言うものではない。僕の様な野良と家猫では生活も食事も格段に違う。君の父上の言っている事は正しいよ。
なら、いっその事この場で私を殺して下さい。そうすればあなたは私の事を一生忘れませんわ
それはいけない。その若い命を散らすには惜しい
それなら出発は明日になさって。ほら今日は月が綺麗ですよ。