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その日の空は青かった。雲一つに無い澄み切った青。それなのに雨は降った
ポツリ、ポツリ
猫の鼻先に水滴が当たる
空が泣いている?
猫は上目遣いで空を見上げた
太陽は神々しい光の矢を猫に放つ。
やめてくれよ。そんなに泣き顔を見られたくなかったのかい。ごめんよ
猫はゆっくりと視線を戻した
今、猫の目線の先にはエメラルド色の海が延々と広がる。白い砂浜には漂流物の海藻や魚
毎日、この食糧にありつくのが僕の日課だ。時にはカモメや人間に横取りされる事もある。そんな時はこう言ってやるんだ。
カリカリするのは猫の専売特許だってな
するとみんなやれやれと呆れて帰って行くんだ。
あれ、もう泣き止んだのかい。うんうん、いつも通りのいい笑顔だ。君はやっぱりそうでなくちゃね。泣いてばかりだと君の涙で海がしょっぱくなってしまうから
太陽は猫の目の前に環状の虹を作った。その虹はスゥーと猫の体をすり抜け、溶けてしまった。
公開:18/03/12 02:28

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