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その店は都会の喧騒から少し離れた閑静な場所に建っている。店へ辿り着くまでの行程には新緑の樹々と弦により作られた天然のトンネル、店主の趣味で作ったバラ園がお客を出迎えてくれる。大人の隠れ家的な店である。そんな店の奥には一枚の絵がひっそりと壁に飾られている。その題名は「旅と猫」。一匹の黒猫とそれに戯れる少女の絵である。ただこの絵には誰にも知られていない物語が存在する。そう僕が少女と会ったのは悪戯好きな一匹の猫がきっかけだった。僕は汽車の警笛を遠くで聞き、左から右へ流れゆく景色をぼぉーと眺めていた。親から夢を反対され、画材一式を持って旅に出たところだった
カランコロン
足元に空き缶が転がって来た。次いで猫が足元にゴロゴロ、ゴロゴロ
さらには猫を追いかけタタタと少女が走って来た。
ねぇ、その猫を捕まえて
僕は急に猫の捕獲に駆り出された。あの時の少女が現在の妻である。猫が取り持つ縁とは不思議なものだ
公開:18/03/12 02:10

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