旅と猫

現在、俺は航海の真っ最中である。照明が暗くて外の様子が見えないが地中海辺りまで来ているのと思う。何故分かるのかって。そんなの理由は決まっているさ。潮の香りが違うからね。船乗りともなればそれだけで十分さ。そう言うお前は誰だって。俺は見ての通り、黒猫さ。倉庫番をしている。昨日、初めてこの任に就いたばかりだ。食糧を食べにくる鼠達を追っ払うのが俺の役目さ。奴らは意外とずる賢いんだ。さっきも一杯食わされた。まさか囮を使って注意を逸らすとは思わなかった。あの時の事を考えると腹が立つ。眩暈がして倒れそうだ。気分が悪いと言っても船酔いじゃないぞ。これでも船乗りの端くれだからね
あ～、どうしよう。船長に顔向けできないよ
港に着くと多くの猫仲間が出迎えてくれた。
何だ何だ、失敗したのかい。誰だって失敗の一度や二度あるさ。クヨクヨするなって
慰めはやめておくれよ。船を下りた今でも、俺は後悔の真っ最中なんだから。