0
196

夏が過ぎ、季節は秋。山々は青から紅葉色へと移り変わった。
空を見上げてみれば数え切れぬ程の鰯雲が茜色の海原をスイスイと泳いでいる。
空は何処までも澄み渡っていた。
おやおや、夕日が舞台袖に戻ってきたぞ。お月様を呼びに行かなきゃ。
今日は中秋の名月。月の晴れ舞台だ。彼女は緊張しているのか、いつも以上にお化粧に力を入れている。
お月様、出番です。
は~い、今、行きます。
舞台の照明が次第に消えていく。数秒後、ポッとスポットライトが点いた。そこには銀色のドレスを纏ったお月様がステージに立っていた。ファンの皆に手を振っている。衣装には黄道十二宮の魚座、牡羊座、山羊座、水瓶座をデザインした刺繍が入っていた。その一つ一つが宝石の様にキラリキラリと発光している。
今日はみんな、私のために来てくれてありがとう。聞いてください。新曲 月の音色。ラララ~
公開:18/03/10 12:18

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容