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月が綺麗ですね。
私はベッドに横たわり、暗い部屋の天井を見ながらポツリと呟いた。当然、誰からも返事は来なかった。そんなことは百も承知していた。それなのに私は心のどこかで期待していた。また彼女に逢えないかなと。月は私と彼女を繋げる運命の糸だろう。思えば彼女と会ったのも満月の夜だった。私が夜道を歩いていると橋の上で空を眺める一人の少女がいた。私は何をしているのかと尋ねた。少女は何も言わず、ただ月を指差した。
ああ、今日の月は君と同じくらい綺麗だ。
私は照れくさげに言った。少女はニコリと笑った。私と少女はそれからその橋の上でただひたすら月を眺めた。ふと目線を落とすと横にいたはずの少女は消えていた。辺りを探しても見つからない。ただ川辺には季節外れの蛍が一匹。か細い点滅を繰り返していた。その後、月に吸い込まれる様に天高く昇っていった。私があの日、見た少女は月が見せた幻だったのだろうか。それとも…
公開:18/03/10 11:52

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