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私には一夏を共に過ごした相棒がいた。
そいつは掴み所が無くて、周りに流されやすくて、コロコロと表情を変える気分屋の軽い奴だった。
だからだろうか、一度付き合い始めると危なっかしくてひと時たりとも目を離せなかった。
あいつの周りには私みたいな人間がいつも傍に居ようとした。

ある夏の日、我が物顔で学校の近くを通り過ぎていくあいつを見た。
その様は余りにも大きく異様で、私という存在が小さく思えてならなかった。
そして私の心にポツリポツリと波紋を落としていった。

気付けば後を追っかけていた。
腕を触れる限り、足が上がる限り懸命に駆けた。
ふと顔を上げると、あいつが動きを止めてこちらを見下ろしていた。
怒っている様で、泣いている様で、悲しんでいる様な顔で。
私は足を止め、見つめ続けた。
あいつは風に煽られて何処までも遠くその背は小さくなって…消えてしまった。
青春
公開:18/03/10 21:32

普通のへいわじん

月の音色にて噂を聞きまして。
よろしくお願いいたします。

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