カメラの向こう

私がカメラを覗くと私と同じようにカメラを構える自分が見えた。ああ、そうか。私の目の前には鏡があるのだな。私はスッと視線をずらし前方を見た。けれど目の前にはそれらしい鏡など一つもない。あれっ、私の気のせいだったかな。もう一度覗くと今度は美女が着替える所が見えた。見てはいけないと思いつつも、ついつい目線が追ってしまう。
ちょっと、君。
私は急に背後から声を掛けられ、ビクッとなった。もしかして今、覗いていたのをバレたかな。恐る恐る振り返ると会社の先輩がいた。
ああ、先輩でしたか。どうしたのですか
いや～仕事場が近かったから寄ってみたんだ。何かあったのかね。酷い驚きようだったぞ
それがカメラを覗いていたら美女が見えたので。
どこにそんな人間がいるんだい。
そうですね。何処にもいませんね。私の気のせいだったのかな
気を付けろよ。見えない物が見えるって事は世にも奇妙な世界に片足を踏み込んでいるのかもよ