月

ある山奥に嘘つきの村がありました。村人はみんな、呼吸をする様に嘘を付きます
聞いておくれよ。この前、あのお月様に登って来ただよ
へえ、どうやって登っただ
簡単だべさ。まず煙草を一服吸ってだな。昇っていく煙を手で捕まえるだよ。そしたらあとは梯子のようにひょいひょいと登るだけだべさ
それでお月様へ行ってどうだった
んだな、大したもんじゃなかったな。俺は煙を登ってかなりの汗をかいていただ。その汗が月の地面に落ちたと思ったらナメクジみたいに溶けてしまっただよ
あ～、だからか、お月様があんなに欠けたのは。しょうがねえな。今夜にでも雲の上に行って周りの星を拾ってきてやるよ。星で穴埋めしておけば誰にもばれねえよ
いつもすまねえな
構わんよ
俺、決めただ
何を決めただよ
俺はもう嘘はつかね
そだな、嘘は良くね。で、嘘を辞めてどうするつもりだ
んだな、真っ赤な嘘を辞めて白々しい嘘を言うだ。