月

あなた、持っていますね。返して下さい
えっ、何のことですか。私のツキの事です。私が手塩にかけて大切に育ててきたのにあなたが来てからみんな逃げて行きました。気付いたらあなたの側に集まっている。それ相応の謝礼はお払いしますのでそれを返して下さい
返してくれと言われても困るな。そんな実感ないし
そうですか。あなたもあっち側の人間ですか。よくいるんですよね。自分が幸福であることに気付かない人間が。そういう人間に限って自分は不幸だ、不幸だ、なんて恥ずかしげもなく言うんです。私の事が信じられないならあそこで宝くじを買ってみなさい、さあ、早く

こっ、これ見て下さい。あなたの言った通り宝くじが当たりました
私の言った通りだったでしょ。それじゃ、私のツキ、返して下さい。ここに百万あります
嫌です。返したくありません
なら二百万でツキを売りましょう
いいんですか。ありがとうございます
ふふふ、上手くいったわ