無血革命

食物連鎖の頂点には人間が君臨している、と勘違いしてはいないだろうか。
確かに我々人間は、上位に食い込むだろう。
けれどそれだけだ。
我々の頭上には意外にも植物、言の葉が君臨している。

人の世界は言の葉で支配されている。
言の葉が紡ぐ名によって、我々は我々を認識し、自他の境界を作出する。
そしてまた、思考も然り。
誰ぞが彼を「悪人だ」と叫べば、我々の認識は彼を悪人だと決定し、彼の弁解によっても覆ることは無い。
言の葉を利用しているのだと勘違いした我々は、あたかも受粉に利用される蜂のように、言の葉の上で踊り続けている。


と、友は私に言った。
我々人類は今こそ言の葉の支配から逃れなければならない、とも。
彼は恋人を殺した戦争を、戦争を煽った言の葉を酷く恨んでいるようだった。
計画では、そろそろ彼が紙魚の放流を始める頃だ。
この手紙が白紙になった時、彼の願いは叶うのだろう。