鏡が映すモノ

0
195

私は自分の顔が嫌いだった。鏡に映る自分の顔を見たく無かった。

だから、私は部屋の鏡を黒く塗り潰した。何も映さないよう執拗に。

だから、私は部屋の窓を黒く塗り潰した。光を反射しないよう執拗に。

だから、私は私を映すあらゆる物を黒く塗り潰した。

そして、私の部屋は黒で満たされた。

嗚呼、もう何も見えることは無い。何も私を映すことは無いんだ。

『寂しいよ。苦しいよ。』……何か聞こえてきた。

私は辺りを見回す。何も見えることは無い。

この声は何処からするのか。音源の在り処を求めて、ふと気付く。

これは、私の内より聞こえているのだ。私の真実の心を映しているのだ。

やめて!そんなもの知りたくない。

思わず耳を塞ぐが、声が止むことは無い。

当然だ。心の鏡は黒く塗り潰すことなんか出来はしないのだから。

自分の心に嘘はつけないのだから。
ホラー
公開:18/03/09 21:56

普通のへいわじん

月の音色にて噂を聞きまして。
よろしくお願いいたします。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容