葛藤
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春。ご主人様と一緒に夜桜見物をした。こんな日が来るなんて思ってもみなかった。茶碗だった頃は、ご主人様のもぐもぐする顔を見ていれば幸せだった。しかし世の中にはもっといろんな幸せがあると知った。猪口になってよかった。
茶碗は、あの家出も自分の碗生にとっては必然だったのだと思った。
夏になった。夏はさすがに熱燗ということは無いだろう。しかし、冷酒をちびちびやるのも良い。どんな夏になるだろう期待に胸を膨らませていた。
ご主人様が帰ってきた。コンビニの袋を持っている。まっすぐこちらに向かってくる。今日はどんな一日でしたか?話しかけようとしたその時、
「夏はキンキンに冷えたビールだよね」そう言って、隣にいたグラスを連れて行った。
がーん。
しかし私は知っている。また冬が来ることを。冬になればまた私の出番だ。自分に言い聞かせ、じっと冬になるのを待った。
冬。
「ホットワイン、超美味しい~」
茶碗は、あの家出も自分の碗生にとっては必然だったのだと思った。
夏になった。夏はさすがに熱燗ということは無いだろう。しかし、冷酒をちびちびやるのも良い。どんな夏になるだろう期待に胸を膨らませていた。
ご主人様が帰ってきた。コンビニの袋を持っている。まっすぐこちらに向かってくる。今日はどんな一日でしたか?話しかけようとしたその時、
「夏はキンキンに冷えたビールだよね」そう言って、隣にいたグラスを連れて行った。
がーん。
しかし私は知っている。また冬が来ることを。冬になればまた私の出番だ。自分に言い聞かせ、じっと冬になるのを待った。
冬。
「ホットワイン、超美味しい~」
公開:18/03/09 09:29
茶碗の気持ち
文章を書くのが大好きです。
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