海底のサーカス

海の底の底の底。
空を飲み込み、音を飲み込み、光すら飲み込んだ場所に流れ着いた。
巡り巡って落ちついたそこには命が溢れていた。

マリンスノーがしんしんと降り積もる。
悪魔が闇に光を灯し、吸血鬼はそれに戯れる。
海鼠は地を駆けて、鰻それを知らん振り。
小魚酔いどれ火を噴けば、火屋が蓋して店仕舞い。

全てがチグハグだった。バラバラでデコボコだ。
だけど、何もかもが赦されていた。私は救われた。

私は自分の事を誰かに知ってほしかった。
心の内を洗い浚い解き放ちたかった。
誰でもいいから本当の自分を見て欲しかった。認めて欲しかったんだ。

だけど臆病だったから私は何処までも逃げた。
目に見えぬ何かに追われ続けて、残った居場所は海の中だけだった。

あらゆる存在が赦される海底のサーカス。
私は此処に骨を埋めようと思う。