嘘の街

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海を埋め立て、高層ビルを建て、道路を走らせる。ここにはかつて、多くの人々が生活を営み、活気に溢れていた。だが、この海上都市の主軸となっていた会社が経営破綻。今やゴーストタウン状態だ。しかし、たった1人この街に残る者が居た。
彼は、技術職として会社に定年まで従事していた。天涯孤独で、仕事に全てを注いだ彼にとって、ここは人生そのものだった。
「淋しい」
空っぽのビルに囲まれ1人彼が呟く。
「そうだ、街を復活させれば良いのか」
その日から、彼はアンドロイド作りを始めた。彼は元々アンドロイド技師だったのだ。すぐに街は活気で溢れた。しかし、空の箱を梱包する者、環状線で延々と車を走らせる者など、全てが無意味で偽りの活気だった。
「人間の体に似ているな。止まる事なく動き続ける細胞達。意味なんて無い。だが、それで良いんだ」
公園のベンチで満足そうに彼は頷くと、静かに瞳を閉じ、その体の活動を永遠に止めた。
SF
公開:18/03/05 13:09
更新:18/03/18 00:47

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