老人と少年と海

言葉の海を知っているか？ほら、鳴き声が聞こえただろ。そう、ここがその場所さ。昔からここはよい漁場でな、わしから言わしてもらえば天国の海さ。言葉の奥深さも味わえる。指で弾いて、下へ潜るほど大物が泳いでいる。さぁ、やってごらん。１、２、３、まだ早い。ははは、そんな目でこちらを見るな。わしも若い頃は親父に喝をいれられたもんさ。捕まえるには、まぁ、グローブ使うだの頭閃かせることだ。ん？あれは嵐か。次期に去るさ、心配いらん。どうした、顔が青いぞ。さては文字酔いだな。少し目を休めておけ。夜釣りは久しぶりだ。（以下、老人の回想）……あぁ、名残惜しい。もう夜明けか。腹もへったし、帰るか。 いくらでも釣れるが、わしも眠りたい。なに、一匹も釣れてないって？お前はどこに目をつけてるのさ、より取りみどりの釣果だってのに。おい、朝日に叫ぶな。ったく、もう元気だ。ほら、そんなにほえぇるなって。おぉ、潮を吹きやがった。