夢見る毛布

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その毛布を掛けて眠ると、自分の理想の世界を夢見ることができる。

大好きなあの娘とラブラブになったり、世界中の人が自分のパンを食べに来てくれたり、アカデミー賞で主演女優賞を受賞したり。
みな夢の中での暮らしが離し難くなり、起きて活動する人間がいなくなってしまった。一部の成功者たちを除いて。

現実世界で活動している成功者たちは困った。何しろ街に出ても店が開いていない。それどころか自分の運転手さえ起きてこない。もちろん会社の社員たちも出社しないので、会社の先行きが危なくなってきた。家の中、そして社員に対して、夢見る毛布使用を禁止した。さらに、政府に掛け合って、夢見る毛布の規制をしてもらおうとした。

しかし、それはできなかった。なぜなら政府高官も議員たちもみな夢見る毛布を使っていたからだ。夢の中で自分たちの理想の政府を手に入れた彼らは、二度と現実世界には戻ってこなかった。
その他
公開:18/03/07 09:41
不思議な言葉

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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