なごり行き

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「次は、なごり行き、なごり行き」
僕はそれを聞いて、しまった、乗り間違ったと思った。 知らない土地を目指す列車に、体は揺られる。
ふと車両を見回すと、何故か知った顔ぶればかりだ。同じ陸上部で親友の裕太。向かいの席の大谷。大好きな塾の岡先生。
そして、目の前には遥香がいた。遥香は微笑むと僕に問いかける。
「ねえ、この街や私のこと。まだ名残惜しいんだ」
「そりゃあ。おれ、弱虫だから…」
遥香が窓を振り向く。
「雪って、溶けるけど、消えないの。土に染みて、色んなものと交わって、栄養たっぷりの水になる。私たちもきっと。覚えていてね」
「…3年間ありがとう」
「ほら、次で降りて。行き先、間違えてるよ」

目が醒めると、布団にいた。今日、僕は街を発つ。気怠い右手でカーテンを引くと、レース越しに柔らかな白が見えた。木漏れ日?違う。今年最後の雪が降っていた。
青春
公開:18/03/07 01:44
更新:18/05/21 23:31

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