クロックマン

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時計屋を営んでいる。
祖父から受け継いだが、近頃は時計を買う人も少なくなった。
「いらっしゃいませ」
三揃いに中折れ帽の白髪紳士だった。
「ネジ巻きの懐中時計はあるかね?」
昔ながらのこの店には山ほど。
「調子が悪いので取り替えたいのですが」
紳士は背広の前を開く。

なんと、胸の真ん中にぽっかりと穴が空いている。
……時計?
穴の中で懐中時計がふわふわと浮いていた。
「これが止まってしまうと私も止まってしまうのです」
そういう事なら、と、最新のソーラー電池式を勧めた。
いちいちネジを巻かずに済む。
ふむふむ、と紳士は頷く。
「ありがとう。でも手巻き式の時計を頂くよ」

どうして?
「やはり自分の時間というものは自分で巻きたい」

そういうものでしょうか?
「1日の終わりにネジを巻く。それが私に生きていることを実感させてくれる。お天道様任せじゃ、人生はつまらないものになるんじゃないかな」
ファンタジー
公開:18/03/06 18:13
更新:18/03/06 20:50

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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