桜草

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桜草を知っているだろうか。「さくらそう」ではない。「さくらくさ」だ。
桜の花が散り始めるころ、花びらのそばに小さな芽が出る。
最初は淡い緑だったその芽は、だんだん色を濃くし、やがて葉となる。
…はずなんだが、中にはおっちょこちょいな芽がいて、桜の花びらと一緒に空中にダイブしてしまう。
当然、地上に真っ逆さまだ。

地上に落ちた芽は、桜の葉にはなれず、かわりに「さくらくさ」になる。
ひょろひょろの茎に小さな小さな桜のような花を咲かせる。
そして春になり、本物の桜が咲くころにはその命を終わらせる。

今日もどこかの桜の木の下では、おっちょこちょいの芽がさくらくさを咲かせているかもしれない。
ファンタジー
公開:18/03/04 09:46
更新:18/03/04 09:48

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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