カメラの向こう

　あなたが亡くなって早三年。
　五歳の春奈は最近、あなたが撮ってきた世界中の動物たちの写真を使ってある遊びに夢中になっている。
「みてママ！　おさるさんがとこやさん、らくださんとくまさんがおきゃくさん、ねこさんはねむたいからおるすばん！」
　あなたのアルバムを見せたら、春奈は写真を取り出してそれを並べて物語を作るようになった。春奈曰くカメラマンは私みたい。私としては一枚くらい三人で写っている写真が欲しかったのだけど。
　そんなある日、掃除中にあなたの一眼レフを見つけた。初めて会った時自慢していた中古のやつ。
「あれ、フィルムが残ってる」
　私は気になって現像してみた。三人で写った写真が一枚だけあった。あなたが赤ちゃんの春奈を嬉しそうに抱っこしている。どうやら撮影者は一人実家に残した母で、縁には母の指が入り込んでいた。思わずくすりと笑った。
　私はそれをこっそり春奈の物語の中に混ぜてやった。