ちちの香り

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実家からミルク石鹸が届いた。ミルク石鹸はA県の小さな工場で作られた石鹸で、県民のどの家の風呂場に置いてあるものだった。廃番になってしまったはずだが、どうやら復活したらしい。牛柄が印刷された箱。一昔前のフォント。覚えている限り当時のままだった。俺が子供の頃に無くなったんだっけな、とぼんやり思った。
丁度石鹸が切れてしまったのでミルク石鹸はその夜早速使われた。よく泡立ち、滑らかに肌に広がった。
風呂で温まると眠くなったのでいつもより早く布団に入る。
大きなあくびをしたら「あの匂い」がした。パジャマと肌の間から知らないうちに立ち昇ってきたのだ。
ああ、懐かしい。子供の頃に両親に挟まれて寝た冬の夜。体温の高い父の胸元にすり寄って眠ると「あの匂い」がしたんだ。家族で同じ石鹸を使っているのに、父の体の匂いはぬくみがあるように感じた。

んん?
…自分から父親の匂いがするって。

…まさか加齢臭?
公開:18/03/03 20:08

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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