ひめくり

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 ……。
 どうやらいつの間にか眠つてゐたやうだ。

 今はいつたい何時だらうか。
 私は少し身体を動かし――動いた――窓の方へ眼を向けた。とても明るいので夜で無いことは、確かだらう。
 ならば、とばかりに思い切りよく布団から出て窓を開けてみる。
 
 ――外は明日だつた。

 私は少少狼狽した。
「そんな筈は……」
 と、しかし、そんな心持を覚られぬやうに――誰にかはわからぬが――注意深く息を調へると、部屋を出て、玄関へ向かひ、さうして握り玉に手をかけると、ひと思ひに扉を開けた。
 
 ――外は明後日だつた。

「ははあ、どうやら此れは……」
 と、独り言ちると私は部屋へと戻り――部屋が明明後日になつてゐた――のには一向構はず、まだ仄あたたかい布団に身体を滑り込ませると
「わたしがしあはせでありますやうに」と心の中でつぶやいた。
SF
公開:18/03/04 19:51

田中目八( 大阪 )

1978~。西成郡勝間村の人。単家、布衣の人。短時間労働者。即興演奏者。
俳句雑誌『奎』同人。
2022年イグBFC3優勝(同着)
https://twitter.com/ConchHailuo

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