ぬ る い 。

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「ぬるい。取り替えてくれ」
ラーメン屋で、店員を呼びつけた。
横で妻が目を丸くしているが、僕はただ、普通に熱々のラーメンが食べたいだけだ。
店員は頭を下げ、作り直したものを持ってきたが、口をつけるとまたぬるい。憮然として箸を置く。
いったいどうなってるんだ。

この店に限らない。
最近、口にするものすべて……コーヒー、味噌汁、カレー、何もかもがぬるい。
客に火傷をさせないよう、わざとさましているのだろうか。
妻は、冷たく光る目で僕を見る。
「なんだよ。僕がおかしいって言いたいのか?」
だが、返事はない。

ふと、妻の声を最近聞いていない気がした。
このところ仕事が忙しく、かまってやれなかった。ふてくされているのだろう、すっかり目もつり上がって――

「にゃあ」
突然、妻が声を発した。
店員が「にゃあ」と答え、他の客も「にゃあにゃあ」と唱和した。

そうか。
猫舌が主流の世の中になったのか。
ホラー
公開:18/03/04 18:20
更新:18/03/04 19:06

滝沢朱音

小説を書いています。SF(すこしふしぎ)系や、生と死を見つめた作品が多いです。
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