空仰ぎ、春笑う

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 空が、あまりにも綺麗だったので。
「先輩、こけますよ」
「……うん」
 空から目を離すことができずに外を歩いていた。後輩の注意は耳に入ってきても頭には入ってこない。私は依然空を仰いだまま、目を離せないでいる。
「先輩?」
「いや」
 薄い透き通った空色。そこには白い綿雲も浮いている。
「春だなぁ。って。思ってさ」
 泥のように空を覆い尽くす雲はそこにはない。雲と同化するほど色を失ってしまった空はそこにはない。そこにあるのは、輝く空と雲。
「春だなぁってね」
 まだ少し肌寒いけれど。確かに、春はやってきたのだ。
青春
公開:18/03/02 14:16

空潟聿

よろしくお願いします。

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