菜の花ノスタルジア

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僕が幼かった頃は路線バスで幼稚園に通っていた。朝は停留所まで母と行き、幼稚園の最寄りの駅で降りる。そこに先生が待機していて集団登園。帰りはその逆で、各自各方面に乗って、降りる駅に母親が迎えに来ていた。今みたいにカード1枚でOKではなくて、ちぎった回数券を2枚バスケットの中に入れていた

その日、僕は帰りの駅で泣いていた。回数券がない!先生も急いでいたのか、僕が乗るバスを見つけると戻ってしまった。子どもの知恵じゃ、どうにもできない。これはもう泣くしかなかった

すると、見知らぬおばさんが僕の手にバス代の50円を載せて、そっと握らせてくれた「おばちゃん…」涙と鼻水をズルズルさせながら言葉にもならないまま、バスに乗り込んだ。到着駅に母をみつけ、降りながらまた涙。「ごめんね。今朝うっかり1枚入れ忘れて」と何度も言う母の手をぎゅうっと握った

橋の下では菜の花が黄色く土手を染めてフフフッと笑っていた
その他
公開:18/03/02 01:48
更新:18/03/02 21:52

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