カメラの向こう

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明日で俺も四十路の中年となる。
明日の誕生日に今までの人生の中で際立った思い出の場所へ行こうと思う
嫁のお下がりで貰ったピンクのデジカメを箪笥から取り出す。
どんなに人気な遊園地よりも、大好きな歌手のライブよりも、鮮明に覚えているものの場所。
カメラの最初は、軽の車を買ったところだ。青のゼストを背景に彼女が笑っている。彼女の腹は少し膨れていた。
スマホのメモに車の前と書き移す。
一度ボタンを押すだけで涙腺は緩んでいく。不思議なボタンもあるもんだ。
このカメラで撮った写真は全て近場で、かつ何十回と行った場所ばかりだ。
公園、行きつけの喫茶店、俺らの出会った高校に娘の行っていた小学校。
何処もかけがえのない思い出の場所だ。

カメラに景色を写す。そこには誰も写らない。景色はずっと変わっていないのに。
嫁と娘だけが除外された空間。
蹲り、顔を手で覆う。
なあ、どうして俺を置いて行っちまったんだ?
その他
公開:18/03/02 08:00
月の音色

腹痛

犬派です

作品に使用している画像はすべてフリー素材です。
コメントを頂いても返信出来ない時が多いです。すみません。

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