深い泥の中のゲームソフト

我が家はれんこん農家だ。
収穫期、泥の中に埋もれているれんこんを掘り出す。
深い深い泥の中からやっと掘り出したれんこんの先に、何か付いている。

家に帰り泥を落としてみると、小学生のころ無くしたゲームソフトだった。
「こんなのが釣れたよ」母親に声をかけてみると「あら、見つかっちゃった？」と宣う。
「あんたがゲームばっかりやって宿題しなかったでしょ。授業参観の後に先生に散々怒られたのよ。その勢いでね、つい、投げ込んじゃったの」

泣きながら家中探した遠い日を思い出しながらも、母親の気持ちもわかる。
あー俺、大人になったんだな。

ゲームソフトは意外ときれいで、なんだか今でも使えそうだ。機械に入れる。おお、動きそうだぞ。
ゲームを再開してみると画面上の所々に黒い丸がある。穴が空いているのである。まるでれんこんみたいだ。

大人になるってこういうことかもな。画面上の穴をみながら思った。