陸から降るモノ

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海底の街で、私たちは暮らしている。
海流が頬を撫で、クジラが音楽を奏でる。
産まれた子はサンゴの揺り篭に守られ、死んだ者はクラゲで優しく包まれて地上へと送られる。
夏には沖から来たホタルが頭上で星となり、冬には海中に氷柱がはしる。
雄大な海の中で、永やかな時間の中で、私たちは小さく、刹那の時を生きている。

時折、地上の民が何かを投げ入れる時がある。
それらは水に触れるときらきらと輝き、小さな音を発する。
私たちは地上の民を見たことが無く、また言葉も通じない。けれどそのきらめきが私たちに見せる暖かさは、私たちの営みと同じものである。
あれはきっと、地上に生きた誰かの思いなのだろう。

そのきらめきが幾粒も集まって、そしてまた、私たちが産まれる。
公開:18/03/03 00:22
更新:18/03/03 14:54

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