夢喰いと夢渡り

4
216

「また食べてるの?」
背後から声が聞こえたのは、黙々と食事をしている最中のことだった。
ふりかえると其処には、眉間に皺を寄せた夢渡りが居た。

「やぁ、こんなとこで会うなんて。奇遇だね。」
「僕はできれば会いたくなかったよ。また食べてるんだね。」
「それが私の役目だから。」
「美味しいの?」
「いや、全く。」
「そうか。」

そう言うと夢渡りは、トンッと飛び跳ねた。

「もう行くの?」
「君がここにいるってことは、すぐに目を覚ますだろう?次の夢へ渡るよ。」
「そっか。」
「あのさ、『忘れたい夢』を食べ続けるのは、大変じゃない?」
「いや?全く。」
「…そうか。」

次の瞬間、夢渡りは消えていた。
止まっていた手を動かして食事を再開すると、軽い振動が起こる。
もうそろそろ、この子が目を覚ますのだろう。

「…次は、いい夢を。」
その他
公開:18/03/02 23:01

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容